テレビ番組『天才!志村どうぶつ園』で大人気の天才チンパンジーのパンくんは2012年ショー中に女性研修生に襲いかかる事故を起こし、大きな騒動を巻き起こしました。
今回は、以下の内容についてたっぷり解説していきます。
- パンくんが起こした事故の経緯
- 専門家のテレビ番組批判
- パンくんの事故後と現在
- パンくんとタレント志村けんさんの関係
- パンくんのお嫁さんと子どもについて
※この記事は2024年8月20日に更新しています。
志村どうぶつ園のパンくん、事故は何だったのか?
2012年9月6日、熊本県阿蘇市の観光施設『阿蘇カドリー・ドミニオン』で発生した衝撃的な事故が、大きな話題となりました。
人気のチンパンジー“パンくん”が、ショー中に女性研修生を襲ったのです。
事故の詳細と経緯
- 2012年9月3日から女性研修生(福岡市の動物専門学校生)は、2週間の予定で「阿蘇カドリー・ドミニオン」で研修を開始した
- 研修生は、園内の掃除や動物の餌作りなどを行った
- 2012年9月6日事件当日、パンくんは、トレーナーの宮沢厚さんらとともに、1日3回開催されるショー「みやざわ劇場」に出演
- 3回目の最後のショーが行われ、研修生は観客が写真撮影しないよう舞台脇でチェックを担当
- 3回目のショーが終わって午後4時ごろ、パンくんが舞台から観客席に向かっておじぎをした際、舞台脇にいた研修生に走り寄り噛みつく
- 宮沢さんにより引き離されるも研修生は足首や額、腰などをかまれてけが、特に足首のアキレス腱付近は、噛みつかれたことで深刻な損傷を受けた
- 研修生はドクターヘリで熊本市内の病院へ運ばれ縫合手術を行った
- 事故を受けて、園はショーを当面中止することを決定
筆者は事故より前に実際に「みやざわ劇場」に行ったことがあります。
観客のカメラに対する指導がめちゃくちゃ厳しかったことを覚えています。
トレーナーの宮沢さんが「絶対にカメラを舞台に向けないでください!向けた瞬間そのショーは中止になります。午前のショーも中止になりました。」と厳しく観客に何度も警告していました。
宮沢さんの険しい表情に、パンくんに対するカメラがどれだけ危険なのか感じました。
スタッフも一緒になって、2度3度と「カメラは絶対禁止」というアナウンスをしていました。
研修生の女性は、そのチェックをしていたのだと思います。
参考記事:日刊スポーツ「パンくん暴れ「志村どうぶつ園」降板濃厚」など
“パンくん”(オス)の舞台は正直ピリピリしていたよ
対して、“プリンちゃん”(メス)の舞台は平和そのものだった
パンくんが事故を起こした背景
チンパンジーが性成熟を迎えると行動が予測しづらくなるため、適切な対策が求められます。
広報担当者の話をリストアップしました。
- 襲った原因は不明
- パンくんは母親が育児放棄をして人間に育てられたため、他の個体よりはるかに人に親しんでいる、それだけに驚いている
- チンパンジーは繁殖期に向かうと、雌への優位性を示そうと攻撃的になる“ディスプレー行動”という習性がある
- 女性研修生を雌(メス)として見ていた可能性もある
参考記事:スポニチ「日テレ「志村どうぶつ園」チンパンジー パンくん女性襲う」
社会的影響と反響
この事故は、動物福祉や動物園の運営に対する社会的な問題提起を引き起こしました。
事故後、多くのメディアがこの事件を取り上げ、動物園の安全管理や動物の取り扱いについて議論が巻き起こりました。
テレビ番組『天才!志村どうぶつ園』に関する専門家の厳しい意見
松阪崇久先生の専門は比較発達心理学、霊長類学で、つまりチンパンジーの研究者です。
また、徳山奈帆子先生は、野生のチンパンジーやボノボの生態研究が専門です。
専門の先生方は、そもそもパンくんが着衣で二足歩行を行うこと自体、自然なチンパンジーの姿ではないと訴えています。
また、番組の演出にチンパンジーにストレスを与える部分(演出)があったことを指摘しています。
松阪先生と徳山先生は番組の放送内容、そして視聴者の間違った反応(パンくんが人間と同じように喜んでジェームズとおつかいしていると認識)に心を痛めていたようです。
チンパンジーの専門家が揃って、番組(『天才!志村どうぶつ園』)を問題視していたということになります。
参考資料(PDF):著 松阪崇久「ショーやテレビに出演するチンパンジー・パンくんの笑いと負の感情表出」
X(旧Twitter)世間の反応
事故発生後、X(旧Twitter)では多くのユーザーが反応しました。
握力が200キロもあり、世界的なチンパンジーによる死亡事故も報道で知っているため「チンパンジー=猛獣」と認識している人が多かったです。
被害にあわれた方は本当にお気の毒でした
パンくんのその後の生活と現在
事故後、パンくんの生活はどのように変わったのでしょうか?
パンくんの事故後の生活と現在についてです。
パンくんの事故後の生活
2012年9月の事故後、パンくんは一時的に公演を自粛し、非公開の獣舎で過ごしました。
そのままパンくんはみやざわ劇場を引退しました。
事故から2ヶ月後(2012年11月)パンくんはポコちゃんと暮らす「チンパンジー学習の森」で再び一般公開されるようになりました。
2015年9月、パンくん・ポコちゃんの待望の子どもプリンちゃんが誕生しました。
2024年パンくんが見られる動物園はココ!
現在、パンくんは阿蘇カドリー・ドミニオンに引き続きいます。
「チンパンジー学習の森」でお嫁さんのポコちゃんと仲良く暮らしています。
そして、来園者は2人を見学することができます。
↓実際に私が遊びに行った際のパンくんの様子は以下に書いています(動画あり)。↓
パンくん、実は今もYouTubeに出演⁉
実は宮沢さんとパンくん、今も仲良しで一緒にYou Tubeに出演しているんですよ!
パンくん、2024年10月に23歳になります!
人間換算すると40代の中年男性くらい…
YouTubeでの活動は、パンくんのファンにとって貴重なコンテンツとなっています。
You Tubeの印象だと“パンくん”は穏やかで大人しい個体というイメージ
パンくんのトレーナー宮沢厚さんとは?
パンくんのトレーナーである宮沢厚さんは、東京農大畜産学科を卒業後、アニマルトレーナーとしての経験を積んでいます。
2004年には独立し、阿蘇カドリー・ドミニオンでの活動を開始し、2019年から園長に就任しました。
パンくんのトレーナー宮沢厚さんと筆者の会話
実は筆者は、宮沢厚さんと直接会話したことがあります。
宮沢さんは阿蘇カドリー・ドミニオンでの活動の前、宮崎市「フェニックス自然動物園」で勤務していました。
パンくんも「フェニックス自然動物園」で生まれています。
当時宮沢さんは、オランウータンの“さくら”を飼育していました。
実はオランウータンの“さくら”も有名だったんだよ!
筆者は「フェニックス自然動物園」で、宮沢さんと何度か直接お話ししました。
オランウータンの“さくら”は、よく宮沢さんと園内を散歩していました。
ポンポコのお腹を出して、撫でさせてくれたり愛嬌のあるオランウータンでした。
ところが“さくら”は、全然私に懐いてくれなかったんです(笑)。
宮沢さんがフォローしてくれました。
宮沢さん「さくらは、男の人が好きなのよ。ごめんねぇ~。」
そのくせ“さくら”は、私がかき氷を持っていると陽気に寄って来ていました(笑)。
宮沢さん「さくらは、かき氷に目がないのよ。ごめんねぇ~。」
その程度の会話ですが、パンくんのトレーナーである宮沢さんはとても気さくで良い方でした。
宮沢さんの飼育方針
オランウータンのショーで指示がうまくいかなかったトレーナーの宮沢さんはアニマルトレーナーに最も必要なことに気が付きます。
気づいた重要なポイントは、「フレンドリーな関係」です。
オランウータンのサクラに対して、以前の「ボスと子分の関係」に基づく指導をやめ、嫌がることをしない「フレンドリー」に重点を置くことにしました。
信頼関係を築くことが最も大事だと気づいたのです。
参考資料:読売新聞オンライン:阿蘇カドリー・ドミニオン園長 宮沢厚さん<3>サクラと信頼関係築く
パンくんと志村けんの関係
パンくんと志村けんさんの関係についても触れておきます。
志村けんさんとパンくんの関係
テレビ番組のロケの後、パンくんは宮沢さんの手をふりほどき、帰ろうとする志村さんを追いかけ、しがみついて離さないこともありました。
志村けんさんが夜中にお風呂に入っていてふと「パンくんどうしてるかな」と思い出し、涙が出たというエピソードもありました。
参考記事:朝日新聞デジタル:パンくん心配…風呂で泣いた志村園長 どうぶつ園の交流(無料記事部分)
パンくんはタレントの志村けんさんに相当に心を許し、また志村けんさんは常にパンくんを気に掛けるほどの特別な仲だったことがわかります。
志村けんさん事故後のブログ
これは私、志村けんのことです。
テレビではしばらくパンくんが見られないかもしれません。
私たちの中ではパンくんは本当にいい子です。
放送がなくても、私はパンくんに会いに行きます。
そのアシスタントの女性にも癒されに行きたいです。
動物は本当に優しい存在です。
人は動物にどれだけ癒されるか、ただ言葉がしゃべれないだけで、動物は人間よりも優しい。
家族を大切にし、兄弟も仲良くして、変な虐めをせずに過ごしましょう。
この写真はパンくんが好きな人が保存してほしいです。
私も偉そうなことは言えませんが、今を大事にし、笑顔で生きる幸せを感じましょう。
何が起こるか分かりませんが、パンくんは笑いません。
ただ、私と宮沢さん、そして近くにいるスタッフが、トイレでも笑顔でいることが分かります。
自然に行きましょう。
志村けんさんは、事故後パンくんを気遣う記事をあげています。
志村けんさんが急死
志村けんさんは2020年3月29日に新型コロナウイルスによる肺炎で急逝しました。
その突然の死は、多くの人々に衝撃を与え、コロナウイルスの脅威が一層注目されることとなりました。
パンくんのことを常に気にかけていた志村けんさんが、パンくんと再会を果たすことはできませんでした。
パンくんのお嫁さんと子どもは?
パンくんにはお嫁さんと子どもがいます。
パンくんのお嫁さんは“ポコちゃん”
ポコちゃんは、北海道札幌市にある札幌市円山動物園で生まれたメスのチンパンジーです。
2004年にパンくんとともに阿蘇カドリー・ドミニオンに移り、2007年には「チンパンジー学習の森」での同居生活が始まりました。
パンくんの子どもは“プリンちゃん”
パンくんとポコちゃんの間には、2015年9月に「プリンちゃん」という名前の子どもが生まれました。
プリンちゃんはメスで、誕生から注目されていました。
彼女もまた、動物園での生活の中で多くの愛情を受けて育っています。
まとめ
以下がパンくんに関する出来事を表にしました。
年月 | 出来事 |
---|---|
2001年10月 | 宮崎県フェニックス自然動物園で生まれる |
2004年 | 2歳の時、阿蘇カドリードミニオンに移籍(繁殖目的) |
2004年 | ポコちゃん(2001年9月生まれ)も札幌市円山動物園から阿蘇カドリードミニオンに移籍 |
2004年7月 | みやざわ劇場がオープンし初舞台 |
2004年 | 『天才!志村どうぶつ園』初出演 |
2005年 | 日本動物園水族館協会(JAZA)が「擬人化が動物の本来の個性を誤解させる」として改善を勧告 |
2007年 | 「チンパンジー学習の森」でポコちゃんと暮らす |
2008年 | 日本動物園水族館協会(JAZA)が改善の見られないカドリードミニオンに退会を勧告 |
2009年1月 | 園側が日本動物園水族館協会(JAZA)を退会 |
2012年9月 | パンくん10歳、女性研修生を襲う事故が発生 |
2012年10月 | タレント志村けんさんがパンくんに会いにカドリードミニオンを訪問 |
2012年11月 | パンくんとポコちゃん、「チンパンジー学習の森」で一般公開再開 |
2015年9月 | パンくんとポコちゃんの子ども、プリンちゃんが誕生 |
2020年3月 | タレント志村けんさん新型コロナウイルスにより死去 |
2023年10月 | プリンちゃんがショーを引退 |
事故まで関する流れは以下の通りです。
- パンくん、テレビ番組『天才!志村どうぶつ園』に出演し大人気となる
- パンくん、阿蘇カドリードミニオンでは1日3回の公演をこなす
- チンパンジーの専門家・JAZAが番組と園を批判
- パンくんが女性研修生を襲う事故
- パンくん、ショーを引退
アニマルトレーナーの宮沢さんは、チンパンジーが嫌がることをしない、信頼関係に重きを置いたトレーニングを重視しています。
ところが、霊長類の専門家は「チンパンジーにストレスを与える演出」について批判しています。
- 園側→ショーや番組を見て動物を慈しむ子どもたちの心を育てたい
- 専門家→チンパンジーを自然から離れた行為でストレスにさらすことを心配
ちなみに2009年に退会した日本動物園水族館協会(JAZA)には、2024年現在も阿蘇カドリードミニオンの名前はありません。
考えの相違があるようだ…
この件は、動物園やアニマルショーが大好きな自分自身も考えさせられる内容だった
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